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第74話「療養型病院に長くいると言う事は」 [寝たきりの日々と工夫]

2016年の春

2016年に入り、父の容態は可もなく不可もなく
穏やかに過ぎていきました。
ずっと耳だけは良く、頭もしっかりしている状態は
変わらなかったので、お見舞いに行っても
張り合いはありました。
けれど体重は徐々に減っていき、春の終わりごろには
38キロまで落ちてしまったのが気がかりでした。

小さくなる父75.jpg

いつしか食事量も入院当初の半分になっていました。
「ご飯を食べさせないから、体重が落ちるのでは」と思ったけれど
むしろ逆で、体がもう食事を受け付けないのかもしれません。
気が付くと、この病棟で父よりも長く入院していた方が
誰もいなくなり、いつの間にか男女合わせて
「一番長い入院患者」になっていた事も、また気がかりでした。

少しずつやせ細り、背中を掻いてあげても
骨と皮ばかりでの体になってしまった父を見て、叔父は
「即身仏みたいだな」と口走りました。
徐々に仏様に返る、確かにそんな感じかもしれません。

そして2年半もの長い間入院していると、さすがにスタッフさんも
情が湧くらしく、何人かの方は父を「かぶさん」と呼んで
温かく親しく接して下さいました。
しかし中には新しく入ったスタッフの方(年配の女性)が
少々調子に乗って大声で「あと処置していないのは誰?
ああ、あれか。かぶらぎ!かぶ!」と叫んでいた事もありました。

私がいた事に気が付いていなかった様なので
「うーん、なるほど。家族がいる時といない時では、患者の扱いが
雑になる人もいるのだな」と、驚くと同時に
こういう場も垣間見られて良かった、とも思いました。
とは言え、この問題はこの方の個人的な性格から来る
極端な事例だと思いますが。
実際、この方は父以外の他の患者さんに対しても、同じ様な
言動をとっていました。

呼び捨て75.jpg

しかし、こういう場に遭遇すると、つくづく「誰だって好きで
こんな体になってるわけじゃないのになぁ。体が弱ったからと言って
人間の尊厳がなくなったわけでもないし、何もわからない
木偶の坊でもないのよ」と思ってしまいます。
しかし一番悔しいのは、何より父本人でしょう。

長い入院生活の間、しばしば「患者(人間)の尊厳って、
どこまで維持できるものなのだろう」と言う場面に対峙しました。
そしてできる事なら私は、尊厳を保ったまま生きたい。
そのために介護を受ける身には、なるべくなりたくない。
「介護を受けない体」とは「尊厳を保つ生き方が出来るという事」です。

しかし、そんな状況も他のスタッフさんが素早く気づいて
制して下さったせいか、その後は気になる言動はなく
父はいつも穏やかに過ごしていました。
逆に言うと、父がいつも快適に過ごせるように
関わっていたスタッフさん達が熱心に世話をして
くれていたせいだとも言えます。

実際ある看護師さんからは「他の病院は3か月周期で
転院しなくちゃいけないでしょう。だから患者さんと接しても
忙しないんだけど、でもこの病院はみんな長くいるから
どうしても愛着がわいてきちゃうのよね」と言われました。

色々な事もあったけれど、スタッフさん達からはとても
親しまれて過ごしていた父。とてもありがたかったと思います。



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第71話「病院内でのスキンケア大作戦」 [寝たきりの日々と工夫]

2015年・夏

病院に通って、色々と父のケアをしていたある日の事、
次第に父の顔が荒れだしました。
乾燥しないように化粧水や乳液を塗っても、次第にボコボコと
クレーターのように、おうとつが沢山出始め
「何やら毒素でも出ている様な」そんな様子です。

この時ちょうど遠方にいる従兄弟(いとこ)が
一時帰省していて、病院にもお見舞いに来てくれたのですが、
父の顔を見るなり「もしかしたら、化粧水が合ってないんじゃない?」
と言いました。従兄弟曰く、自分も以前化粧水が合わなくて、
同じ様な肌の状態になった事があるらしいのです。

肌ぼこぼこ75.jpg

従兄弟の場合は、皮膚科の医師に処方してもらった
化粧水に切り替えて事なきを得たらしいのですが、父の場合は
なかなかそうもいかず。
それで試しに薬局に行ってみると、思いの外「老人敏感肌用」の
市販の薬用化粧水が出回っている事に気付きました。
とりあえず、ひとつ購入してみます。

「これできっと良くなるだろう」と、安心したのも束の間
父の肌は一向に良くなりません。ずっとボコボコのままです。
ついに見かねた看護師のKさんが「皮膚科の先生が
1か月に一度ぐらい巡回で来ているから、今度診てもらいましょう」と
本格的な受診を促してくれました。

と、同時に「それまでに少しでも綺麗に…」と
Kさんは通常のケア以上に、とても丁寧に
顔を整え続けてくれました。
Kさんがやった事は温かい蒸しタオルを長時間顔に当てて
肌をほぐしてから汚れを拭き取り、ただワセリンを塗ると言った
とてもシンプルなモノでした。

が、しかし。
そのケアを始めてから間もなくすると、驚くべき事に
父の顔が綺麗になり出し、ついにはキメが整って
非常になめらかな、まるで絹のような触り心地になりました。
思わずKさんと顔を見合わせて「私よりもキレイな肌」と
呟いてしまうほどに、つやつや滑らかです。

スキンケア75.jpg

そう、私たちは「病院は乾燥するから」と、ひたすら保湿を
心がけていましたが、ここで盲点だったのは
「寝たきりの病人は、健常者と同じようには顔を洗えない」と言う事でした。
てっきりお風呂の際に洗ってくれているモノ…と思っていましたが
必ずしも完璧ではないようです。
そしてこれは介護に限らず、女性ならほとんどの人が
「ああ!」と膝を打つ内容ですが、美容の基本はクレンジングです。
「クレンジングと化粧水が一番大事」とさえ言われるほどに
汚れを正しく落とす事はとても大事。

父の場合もまさにそれでした。
要するに、汚れが残った顔に何を塗ってもダメだし
余計に肌荒れを起こします。
しかしKさんが丁寧に汚れを落としてくれただけで
こんなにキメが整って綺麗になるとは…と、思わず高い化粧品に頼る
自分自身のスキンケア方法を見直してみたくなりました(苦笑)

後日、皮膚科の先生が往診に来て下さったのですが
その時にはもう診察が必要ないぐらいの肌になっていました。
(でも一応「アトピーの気がある様なので」と塗り薬を下さいました。
父は元気な頃から、「毒素が強い」と言われる体質でしたが
それは今で言う「アトピー」の事だったのかなと思います)

なめらかな顔75.jpg

その他にも「女性が男性を看る場合の介護」で、盲点になりそうな事として
『剃刀の刃を交換する』と言う事も、念の為に記しておきます。
日頃から電動剃刀を使用しない女性からすると、その使い方は
勿論の事、時折刃を交換しなくてはならないと言う事も、知らない人が
多いかもしれません。
そもそも髭剃りの掃除自体「分解したら元に戻せなくて怖いな」と
思う人が多々いるかもしれません。

私自身も「髭剃りは一度買ったら、ずっと刃が使えるもの」と思っていたし
掃除も叔父に一任していました。
しかし、ある日Kさんに「少しひげが剃り難くなってきたから
新しい刃に交換した方がいいかも」と言われて初めて
「そうなのか」と気が付きました。
(ちなみに刃が古いと皮膚に引っかかって、本人も痛いらしいです)

これは看護師さんから聞いた話ですが、病院によっては
介護師さんが髭剃りを掃除したり、刃を交換するなどのケアを
してくれる所もあるそうです。しかし逆に、全くしない所もあるらしい。
なので後者の場合は、頭の片隅にでもいいので髭剃りのケアを
覚えておくのがいいかもしれません。

剃刀の刃について75.jpg


なので今回、私自身が体験した「病院内スキンケアの盲点」は

1:顔は普通に洗えると言う発想は、寝たきりの人の場合通用しない事
2:美容にはやはりクレンジングがとても大事であり、効果的であると言う事
3:髭剃りは自主的に清掃・点検するのが望ましいと言う事

の3点です。
ちなみに髭剃りに関しては、叔父が新しい物を見つけてくれたので
機械ごと一新しました。そんなこんなで、年末に従兄弟が再び
帰省した頃には「顔が綺麗になっていて驚いた!」と、言ってもらえる程に
父の顔は復活していました。

通常の業務で時間がない中、ひと手間かけて父の顔のケアを
研究&実践して下さったKさんに感謝です。


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第70話「寝たきりの新たな問題、それは拘縮」 [寝たきりの日々と工夫]

2015年7月

暑い夏も寒い冬も、毎日病院に通う日々。
それも2巡目の夏を迎えました。
療養型病院に毎日見舞いに行く必要があるのか否か…は
それぞれのご家族のご都合や想い、患者さんの症状によっても
異なるので一概には言えませんが、うちの場合は本人が
全く動けず、意思表示もできない状態なので
心配で毎日通っていました。

実際に行くと、結構色々な事があったりします。
例えば何かの医療器具のキャップが布団の中や
病衣の襟元に転がり落ちていたり(踏んだら痛いよね)
色々テーピングした後のゴミや、おしぼりの袋ゴミなどが
布団の周囲に散らばっていたり。

これらは単純に看護師さんや介護士さんのうっかりミスなのですが
このように忙しく世話して下さるスタッフさんの手が回らない部分の
フォローを兼ねて、父の様子を見に行く…と言う感じでしょうか。
ただ一度、お風呂上りにストレッチャーに敷いたと思われる
ずぶ濡れの毛布が、布団の中に丸めて置き去りにされていて
(同系色の白なので、わかりずらい)布団や父が冷たく
濡れていた…なんて事もあり、まぁこれは極端に酷い例ですが
そんなこんなで色々気にもなるので、この夏も出来る限り病院に
通っていました。

72出会いと別れ1.jpg


ところで病院に入った途端(要は寝たきりの状態になった途端)
父には新たな問題が浮上していました。
その名も「拘縮(こうしゅく)」
人は長時間体を動かさないでいると、自然と関節部分が
伸縮性を失って固くなり、関節の動きが悪くなってきます。
例えば肘(ひじ)や膝(ひざ)が、折れ曲がった状態のまま
戻らなくなったりとか。
分かりやすく言うと、体が変な具合に固まってくる感じでしょうか。

実際に調べてみると、拘縮には色々な種類がある様ですが
父のように寝たきりになって、関節が動かなくなる場合は
(病棟の看護婦さんのお話では)「廃用性拘縮」と言うらしいです。
父は入院してすぐに、足のひざを折り曲げるようになりました。
病院の看護師さん達から「いつも足を折り曲げてます?」と聞かれて
「いやそんな事はないですよ」と、当初は不思議な気分で
答えていたのですが、結局父がその姿のままでずっといる事に
おかしいと疑念を抱いてから、「拘縮」と言う現象がある事を知りました。

ちなみに父は足のひざの外にも、麻痺していない方の右手を
ぎゅーっと握りしめる様にもなりました。初めは「なんでだろう?
目が見えないから不安なのかな?」と思っていたけれど、これも拘縮。
それでは拘縮になって、一体何が困るのか…と言うと、
それはずばり「介護がしにくいんだよね」と言う事に尽きます。

本人も関節を伸ばす際は痛いみたいですが
(実際には容易には伸ばせないほどに、凝り固まっているんですけど)
こちらとしても、閉じている手の中は汚れやすくなるので
洗いたいけれど、なかなか手を開いてくれないから一苦労…とか
病衣が乱れているからうまく着せようにも、折れた足が邪魔で
うまく行かないとか、そんな弊害が出てきます。

拘縮対策にはマッサージなどが効果的の様ですが
うちの場合は衛生面を色々と工夫してみました。
前にも記したように、洗面器にお湯を張って石鹸で洗ったり
ガーゼを握らせたり、こまめに爪を研いだり、等々。
ところでこのガーゼ、市販の物を適量に切って使用していたのですが
ある日病院の近くに住んでいて、時折父のお見舞いにも来て下さる
親戚の方(私の母の弟のお嫁さんのお母様)が
「家にある、いらない手ぬぐい(布巾)を利用したら、良いものが
出来るのではないか」と考え付き、オリジナルの手ぬぐいガーゼを
作って下さいました。

70硬縮2.jpg

なるほど、これはなかなか便利です。
しかも家にある、いらない手ぬぐいを利用できるから
コストもかからず一石二鳥。
もし宜しければご参考までに。

70硬縮1.jpg

洗うと裾がほどけて、モアモアした感じになるのが
玉にきずですが、それもまぁ柔らか味が増して悪くないかと。

ところでこの拘縮以外にも、看護師さんが
「寝たきりになると、色々良からぬ事が起こるのよね」と言う話を
聞かせてくれました。例えば良く聞く所では「床ずれ」とか
または「肺炎」などもその類です。

以前から「なぜ病院では、肺炎にかかる方が多いのだろう」と
疑問に思っていたのですが、看護師さん曰く「寝たきりの患者さんは
(当然ながら)寝たままで咳をするでしょう?そうすると唾などが
気管に入りやすくなる。だから肺炎を起こしやすいの」と。
なるほど、原理がわかれば実にシンプルな因果関係です。

それにしても介護って、次から次ぎと状況の変化に応じて
色々な問題が顔を出すものだなと、今更ながら思います。
しかし同時に、その都度、知恵を授けて助けてくれる人も
いるものだな、と。
介護とは、日々是色々な事の勉強…かな。


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第66話「病院で選挙をしてみた」 [寝たきりの日々と工夫]

2015年春

父がまだ意思表示が出来た頃、選挙がありました。
私自身、不在者投票などは行った事がありますが
果たして父のような状態の人でも、選挙は出来るのか?
出来るとしたら、そのやり方は?
今回はそんな経験を綴ってみます。

まず病院の事務担当の方が、二人体制で
選挙に立候補している人のリスト表を持って
病室に来てくれます。

そして父に(今回の場合は私が)「立ち会う事を認めますか?」
と確認してから、私に候補者リストを見せて、黙って選びたい方の
名前を指し示すように言います。
(注1:父の場合は目が見えないので、私が指し示しました)
(注2:事前に父には、誰を投票したいか確認済みです)
選挙2.jpg

そして事務の方が投票用紙(これは通常
私たちが普通に投票所で書くのと同じ物)に
選んだ候補者の氏名を記入し、それを無記名の
専用封筒に入れて封をします。

更にその封筒を、今度は選挙管理委員会宛ての
郵送用封筒に入れます。この際、その封筒には
投票者(父の名前)も記入します。
(これは投票所の入り口で、私たちが氏名を尋ねられて
チェックを受けるのと、同じ内容のチェックが行われる
ためだと思います)

そこまでの作業が病室で行われ、郵送用封筒にちゃんと
封がされるまでを、私が立ち会って確認します。
選挙1.jpg

事務の方が言う事には、その封筒は選挙管理委員会に
届いた後、中身の無記名封筒が抜き取られ
それがそのまま投票箱に入れられるとか。
なので開票するまでは、私たち以外の誰も
書かれた候補者の名前が見えない仕組みです。

選挙自体は患者さんの意思が確認できたら
病院に居ても、とても簡単に行うことが出来る…
と言うのが、今回分かった事でした。
でも一つだけ、注意したい点は「選挙をしたい」と言う
気持ちがあったら、それをしっかり早めに
看護師さんや事務の方に、伝えなくてはいけないと言う事。

なぜなら、実は父が入院してから選挙は2回あり
最初の時は看護師さんが患者さん(もしくはその家族)
一人一人に「選挙されますか?」と聞いて回って
くれたのですが、その次の選挙の時は
なぜか聞いてくれませんでした。

てっきり前回の様に病院側が確認に来るものと思って
黙って待っていたら、時間がどんどん過ぎて…
「あれ?もしかして、もう期日前ギリギリでは?」と
言う段階で慌てて「選挙したいんですけど」と
看護師さんに伝えた次第。

そしてこの時は本当に期日前投票期限ギリギリで、
選挙管理委員会に送る封筒も、速達扱いにした程でした。
選挙の規模や種類が違うと、確認に差が生じるのか?
それとも単に病院側の確認忘れか?
理由はよくわかりませんし、病院によっても対応の仕方が
異なるとも思いますが、選挙をしたいと思ったら
こちらから先手を打って伝える方が、無難かもしれません。

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第63話「父、肺炎になる」 [寝たきりの日々と工夫]

2015年2月

ここ数か月、体調に大きな変化もなく
穏やかに日々を過ごしていた父が、突然肺炎を患いました。
前兆がほとんどなかっただけに、それは急な容態の変化でした。

ある日、お見舞いに行くと、そこには激しく咳き込んで
胃の中の物を全部吐きだしてしまった父の姿が…。
その場にいた看護師さんも急な事態にあわあわしていて
「今着替えをしても、まだむせ込みが止まらないから
また汚してしまう。なので収まってから着替えさせますから!」と
タオルをどっさり持ってきては、汚れた父の体の上に
寒くないようにと、どんどん乗せているのですが…。

いやいや看護師さん、落ち着いて。
着替えはともかく、まず汚れたり、濡れてる部分を
拭き取ってあげようよ。
いくらタオルを乗せても、元が濡れてたら寒いよ。

しかしこの時点では、まだ誰もがまさか肺炎とは思わず
「恐らく咳き込んだ調子に、吐いたのだろう」と
簡単に判断していました。
そして父は当日の予定通り(簡単に着替えてから)透析へ。

けれど翌日病室に行くと、父は酸素マスクと点滴を取り付けられ
いきなり重篤な状態でベッドに横たわっていました。
そして当日担当だった女医さん曰く
「肺炎を起こしています。心臓の機能も低下していますし、
酸素量も少なくなっています。いつ様態が急変しても
おかしくない状態なので、心づもりをしておいてください」と。
…ちょっと、それって大変じゃない!!

肺炎100.jpg

俗に「病院で肺炎になったら危ないよ」と言う話は良く聞くし
実際に父方の祖母も、肺炎で様態が急変して亡くなったので
大急ぎで親戚・知人に連絡をしました。
父方の伯父や叔母はもとより、滅多に見舞いに来ない愚弟や
長年連絡が途絶えていた従兄弟まで、お見舞いに来るなど
入れ替わり、立ち替わりでバタバタした日々が
数日続きましたが…。

幸いにも発病から10日ほどを経て、父の容態は
回復に向かってきました。酸素マスクと点滴も外され
とりあえずは落ち着いた様子です。
良かった。

けれどこの肺炎のダメージは、思った以上に大きくて
父はこの時を境に、ぐっと痩せて小さくなってしまいました。
酸素マスクは外れたけれど、鼻に直に通した酸素チューブは
そのあと1か月近く、なかなか外れませんでした。

父の場合はなんとか回復したけれど、やはり肺炎自体は
相当重い症状なのだなと、その体の変化を見ると痛感しました。
全盛期に80キロ以上あった父の大きな体も、この頃には
わずか43キロ。
毎日の総摂取カロリーも、1000キロカロリー程なので
少ないと言えば少ないのですが、それにしてもグッと一気に
やつれてしまった感じでした。

肺炎復活100.jpg

さすがに介護士さん達も「あれ」と気がついたらしく
「軽くなったなぁ」とか「最近痩せちゃったよね」とか、皆さん口々に
心配してくれましたが、中にはおむつのサイズが合わないので
違うサイズを用意したのかと慌てる方もいたぐらい…。

骨と皮ばかりの体だけど、毎日のお見舞いを楽しみにしている父は
気力で頑張っています。
そしてこの時期、父の介護の記録が書籍化されると言う朗報が
入ってきました。なので毎日病院に行っては枕元で「本が出来るよ。
主人公だよ。本が出来たら持って来るからね」と、なるべく
明るい話題を持ち出しては、ずっと励ましていました。
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第61話「療養型病院の春夏秋冬(1年間の記録)」 [寝たきりの日々と工夫]

2015年1月

父が療養型病院に入って1年が経ちました。
その間、色々な事がありました。
ブログを綴っていても、検索項目の中に
「療養型病院ってどういう所?」と言う類の
キーワードが増えてきました。
病院によっても内情は異なるので、一概には言えないけれど
今回は自分が経験した範囲内での
「療養型病院とは、こんな所かな?」と言うお話です。


父はここ(病院)で透析の治療を受けながら、
普通の日常を過ごしています。トイレ(おむつ)の介助や、
入浴、食事、散髪、歯の点検などをしてもらっています。
父は目も見えないし、受け答えもほとんど出来ず
自力ではもはや立ち上がれない、寝たきりの状態ですが
患者さんの中でも元気な方は、テレビを見たり、
おやつを食べたり、ラジオやスマホを使用したりして
日常を過ごしています。
こういう方は、リハビリなども希望すれば行える様です。

父は春先から7か月間は、個性豊かな「介護おばさん」と同室で
そのあと部屋が変わり、1か月ほどは激高するタイプの
患者さんが同室だったので、その人が怒るたびに
ちょっとブルブルしながら過ごしましたが、その方が
転院した後は、とても穏やかな日々を送っています。
…いや、穏やかと言うか、これが普通の状態なのですが。
それがものすごく平和に感じる程に、なぜかここでは
個性豊かな面々に出会い続けていました。

また院内には様々な方が働いていますが、父が日頃
お世話になるのは、概ね病棟の看護師さんと、
介護士さん、そして透析室の看護師さん達です。
ちなみに家族は、なかなか透析室に入れないので
私が接するのは病棟の看護師さんと、介護士さんぐらいです。

スタッフの中には、ものすごく患者さん思いで
親身になって優しいケアをして下さる方がいる反面
中には「なんで!?」と言う方もいます。
近所の看護師Jちゃんは、ケアする場合は
「患者さんの気持ちになって介護すればいい」と言います。
staffiroiro100.jpg

これは想像力の問題でもあるのかな。
例えばおむつ交換をしていただいた後、父の頭の位置が
上になり過ぎて枕が入らず、すごくぎゅうぎゅう詰めに
押し込められていた事がありました。
またある時は、顔が赤剥けるほどタオルでこすって
傷だらけにした看護師さんがいました。
またまたある時は、透析の前にトイレチェックをしていなかった
介護士さんがいた事もありました。その他いろいろ。

これらは少し考えると、すぐに「痛いだろうな」とか
「静かな透析室で、トイレが出てしまったら大変だろうな」とか
イメージできる事ばかりです。
でも同時に、忙しかったり、悪気がないのもわかります。
そうなると、ここはやはり家族がフォローする場面です。

私もやんわりと
「シーツが汚れてますね。交換日ではないけれど替えてもらえますか?」とか
「トイレの点検がまだみたいなんですけど…」と、伝えたりします。
日々出来る限り病院に通っているのも、父の身の回りの世話と併せて
こうしたフォローをするためでもあります。

しかしこの程度なら、まだ許容範囲です。
時にはなかなかの兵(ツワモノ)もいますよ。
okoruhito75.jpg

そう考えると、ともすれば長丁場になる可能性がある
療養型の病院で、日々を円滑に過ごすコツは
一般的な地域とか企業においての人間関係と
あまり大差ない気がしました。それは
『看護師さんや介護士さん、また病院に携わる様々な立場の人々と、 上手にコミュニケーションをとって、仲良く付き合う事』

別にスタッフさんに媚を売るとかではなく、大事なのは
すごく基本的なこと。例えば看護師さんや、介護士さんの
ひとつひとつの所作に対して、感謝したり、お礼を言ったり
笑顔で接したり、尊重したりする等。

Jちゃんが言う所の「センスがない介護」と言うのも
確かに正論だとは思うけれど、こうした柔らかいコミュニケーションを
試みていたら、実際に色々と誤解が解ける場面も出てきました。
例えば透析前におむつ交換をしなかった介護士さんは
怠っていたわけではなく、定時の交換作業と勘違いしていた事や
顔をこする看護師さんは「お正月が来るから、綺麗にしようとしたら
やり過ぎちゃって。ごめんね」と、こちらが言い出す寸前に
自ら名乗り出て謝ってくれたり。
そういう時「ああ、必要以上に怒ったり、問い詰めたりしないで
良かったな」と、心の中で密かに思うのです。
sente75.jpg

それに実際、家族がこの状態の父を家で看るのは
ものすごく大変だし、不可能です。
それを病院の方々は仕事とはいえ、家族に代わって
対応してくれています。力仕事も、汚い作業も、
夜間の作業も、嫌な顔一つしないで行ってくれます。
その安心感と、心強さは、他に例えようがないほどです。
そう思うと、自然とお礼の言葉も出てきます。

すると看護師さんや、介護士さんの表情もパッと明るくなります。
お仕事や気遣いを認めてもらえるのは、どんな職業の人でも
嬉しい事。そうなると、いつも笑顔で親切に接して下さる様になり
こちらも困った時は相談しやすくなる…と言う
良い感じの信頼関係が築ける気がします。

そして同時に、どんな職場にも
神のごときスペシャリストもいるわけで。
いつも優しい気持ちで、患者さんや家族に接している方や
責任感の強いしっかりした方、また底抜けに明るい性格で
常に周囲に笑いをもたらす人など、タイプはそれぞれですが
病院でそう言った方々の介護の様子を見ていると
「すごいな」とか「ありがたいな」と、素直に頭が下がります。
staff100.jpg

更に「この人たちの共通項はなんだろう」と考えてみると
『常に患者さんの立場(気持ち)を第一に考えて、行動している事』
かな、と思いました。

患者さんに声をかける時、相手を尊重した対話をしたり
こちらが困っていたら、面倒な作業でもパッとすぐに対応してくれたり。
それらは難しい医療行為云々ではなく、人としてごく普通の
親身な対応ばかり。むしろ誰でもできる事だからこそ
差が際立つのかもしれません。
そうした意味で、病院の方々の仕事に対する姿勢は
見習うべき点も多かったです。

療養型病院には色々な条件の患者さんがいるし、ご家族もいる。
そして勤務している人も、色々いる。
ここはそういう方たちが、治療や仕事をしながら
「生活」をしている場なんだ、と言う事を感じた1年でした。
それぞれのご家庭に合わせたやり方で、長い病院生活を
上手に過ごせるといいなと思います。
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第60話「楽しみながら病院に通うコツ、色々」 [寝たきりの日々と工夫]

2015年1月

父を療養型病院に預けて、ちょうど1年。
この間、ほぼ毎日病院に通っていました。
私の今までの仕事内容(イラスト制作&お勤めのWワーク)
から考えて、こんなに時間に余裕があった日々は
恐らく後にも先にも、この1年だけだろうと思います。
それがちょうどこの様な形での、父の介護に被った事は
ある意味タイミングが良かったと言えます。

しかし片道30分程の道のりを、毎日毎日ただ通うのは
さすがにちょっと飽きてきます。
お天気や体調によっては「今日は面倒だなぁ」と思う時もあるし。
実際に、病院で知り合った他のご家族の方も「何か少しでも
通う楽しみがないとね。病院はただでさえ、気が滅入る所だし」と
言っていましたし。
(回復の見込みがない)病人の見舞いは長期戦です。
大雪の時も、酷暑の中も、ずっと見舞う家族は大変です。
mainichituuin75.jpg

なので今回は、ささやかながら「楽しく通うコツ」を
自分なりに見出してみました。

その1:素敵なお店を探す
父の病院がある場所は、電車は各駅停車しか止まらず
駅前には広大な畑が広がっているような、静かな住宅街。
でも幸い駅の近くに、とても美味しい個人経営の
パン屋さんがありました。
病院に通っていなければ、知らなかったお店です。
道すがら、ここのパンを買うのが楽しみになりました。

私の場合はパンでしたが、これ以外にも
例えば雑貨屋さんとか、ギャラリーとか、景色のきれいな場所とか
なんでもいいので「病院の近くにしかないもの」を見つけてみる。
ちなみに、うちの近所のおばあさんは、電車に乗って都心まで
ご主人の介護に通っているのですが、帰りに駅の近くで
「うどんを食べて帰るのが楽しみ」と言っていました。
夕飯を兼ねるのも、一石二鳥で良いですね。
oishiipan.jpg


その2:友達を作る
病院内で同じように、家族の介護をしている人と知り合いになると
おしゃべりが弾むし、情報交換もできるし、なかなか楽しいようです。
私はいつも単独行動でしたが、ある時期、介護おばさんが
同室に入ったSさんの奥さんと意気投合し、とても仲良くしていたので
「こういう関係って、お互いに張り合いがあっていいかもしれない」と
思いました。

同世代だと尚更、話も合うようです。
帰り道が一緒なら共に連れ立って帰れるし、寂しさや心細さも半減。
おばさん達は趣味の話もしていて、お互いが作った漬物まで
交換し合う程、仲良くなっていました。
おばさん達.jpg

しかしその関係は、ある日突然終わる事も頭の片隅に
入れておかなくてはいけません。
介護おばさんとSさんの奥さんの場合は、わずか1か月の交流でした。
その後しばらく、おばさんは寂しさの反動が大きかった様に思います。

またいくら交流したいからと言って、誰かれかまわず友達になるのも
控えた方が良い気がします。例えば、私の様に限られた時間しか
お見舞いに来られない家族もいます。その時間に色々ケアしたいのに
おばさんが介入してきたら…。
なので話友達を作る場合は、なるべく自分と近い環境の人が
いいのかなと思います。


その3:病院に通う事に、自分なりの価値を作る。
「なぜ自分が病院に通わなくてはいけないのかな、面倒だな」と思うと
気持ちはどんどん沈んできます。強いては病人にあたりたくなる
かもしれません。
そこで気持ちをかなりポディティブに、切り替えてみます。
『私が今、病院に通っているにはきっとわけがある!』と言う風に。
言わば自分で自分に暗示をかけてみる。
更には自分にしかできない事とか、趣味などと
この病院通いを上手く結びつけてしまうのも手です。

例えば私の場合は、イラストマップを作成するのが好きだったので
「折角1年も同じ町に通って色々見てきたし、病院に来なくなったら
この駅で降りる事もないだろうから、今の内に描きとめておこう」と
いつもより30分早く家を出て、病院に通いがてら
その町のイラストマップを描いていました。

描いた作品は、例えばお仕事の営業の際にも使えるし
展示会で飾るのもいいし。
何でもいいから「未来につながる作業」に結び付けられた事で
自己満足感も高くなります。
また病室の父にも「この近くに、こんなものがあったよ」と
言うように、会話の足しにもなりました。
musashinodai75.jpg


これ以外にも、例えば
「バスの回数券を買ったから、通うのが1回お得だ」とか
「格好いい介護士さんがいるから、今日はその人に会えるといいな」とか
どんな細やかな事でもいいので、少しでも自分が「楽しいな」と
思える事を見つけられたら、通う気持ちもラクになると思います。
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第59話「寝たままの散髪、あと始末のコツ。その他」 [寝たきりの日々と工夫]

2014年の春~冬

今回は散髪のお話。

療養型病院に入院してからの父は、散髪も寝たままで
行うようになりました。
J病院の散髪は、月に一度、外部から委託業者さんが来て行います。
毎回家族が入院費とは別に、受付でお金を払い
直に申し込むシステムです。
対応して下さるのは、二人のお洒落な男性美容師さん。
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が、しかし。
この「寝たまま散髪される」と言うのは、なんとも厄介。
散髪の技術ではなく、その前後の対応には
毎回考えさせられました。

以前にも触れましたが、初回の散髪ではバリカンで刈った髪が
全く処理されずに、そのまま頭皮とマクラ周辺に残っていました。
ゴロゴロのローラーをかけ、枕カバーを変え、おしぼりで頭をぬぐって
を繰り返し、ようやく3日後ぐらいに「全く周辺に毛が落ちていない」
状態になりました。

かなり苦労したので、総合受付にも「この処理の仕方はひどい」と
一言やんわり伝えたのち、次の回からは面会時間外でしたが
散髪に立ちあわせてもらう事にしました。
するとやはり家族が付きそうと、心なしか父に対する
扱いも変わってきたように思えました。

別に私が目を吊り上げて、怖い顔をして立っているわけでは
ありません。美容師さん達は、みんなお洒落でイケメンだから
基本的に私もニコニコしています(笑)
観察していると、どの美容師さんもきちんと刈った髪を
ゴロゴロローラーで取ったり、乾いた布で頭を拭いたりして
それなりに処理しているのがわかりました。

でもその結果、いくら処理してもやっぱり多少の毛が
残る事がわかりました。最後に洗い流せるわけでは
ないから、ある程度は仕方がないみたいです。
せめて湿った布で頭を拭いてくれたら、多少は違うのですが
業者さんはなぜか乾いた布しか用いないので、
尚更毛が残ります。最終的には家族が掃除するしかありません。

そこで具体的な掃除の仕方ですが
ゴロゴロの粘着ローラーや、病院側で貸してくれる
暖かい湿ったおしぼりを用いるのが効果的でした。
また知人の美容師さんに相談したら「一番いいのは
小型掃除機を使う事よ」と教えてくれました。
そこでご近所の技術屋Tさんに相談し、仕事で使っている
業務用小型掃除機を、貸してもらいました。
ただし病室で掃除機を使うと、かなりの騒音になるので
これは状況が許す限りでの使用になると思いますが
確かに効果は絶大でしたので、ご参考までに。
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以下、散髪にまつわる別のトラブルを少々。
ある日、散髪予定日に業者さんが来なかった事がありました。
初めは私が日にちを間違えたと思ったのですが
病棟の看護師たちに確認すると「今日が予定日です」と。
念の為に看護師さん達が、総合受付に内線を入れると
受付でも「今日が予定日です」と言う返事です。

なので更に30分ほど待ちましたが、やはり現れない。
今度は私が直に総合受付に行き「散髪は?」と問うと
その場で対応に出た受付嬢は「散髪は来週ですよ。
チケットを購入されたいんですか?」と、しれっとした返事です。
そうですか、来週でしたか…って言うか、ちょっと待て!

「いえ、チケットは買っています。毎回立ち会うために
この日に(しかもわざわざ昼間に1時間だけ、時間を取って)
来ています。今日も病室で待機していたのですが。
そうですか来週ですか。おかしいと思ったけれど
1週間違えて、受付は皆に伝えていたんですね」と
さすがに少し棘を含む、ブラックな切り返しを少々。

すると受付嬢は「こちらの受付も、今日が予定日だと
業者から連絡を受けていました。でも来ていないから
おかしいと思って、今電話したら業者に『来週ですよ』と
言われました。どうも最初にこちらに伝える時、先方が
一週間違えて言ってしまったようなんです」と言いました。

そうですか、業者さんのミスですか。
でもなんでそれを電話で確認した後、内線で病棟に伝えないの!?
しかも受付は、病棟の看護師さん達達から指摘を受けて
始めて業者に連絡したんですよね?
私が無駄に待っていた時間は、一体なんだったのか。
こうして業者さんからも、受付からも「ごめんなさい」が
ないまま病棟に戻り、看護師さん達に「来週だったみたいです」と
伝えると、さすがに看護師さん達はみんなびっくりして平謝りでした。
でも看護師さん達は悪くないですよね。
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そうかと思うと、その次の散髪の時は業者さんが1週間早く
間違えて病室に来て、父の髪を刈ろうとした事も。
たまたま私が居合わせたので、慌てて
「うちの散髪は来週だと思います。今日はこの後、
透析の予定なので今散髪されたら困ります」と伝えて
未然に防ぎました。
しかしなぜ病室に来るまでの間、誰も業者さんを止めなかったのか?
そのまま髪を刈っている最中に、透析室から迎えが来たら
きっと、てんやわんやな事態だったと思います。

しかし毎回、なぜこんなに散髪に関するトラブルが
相次ぐかと言うと、通常の美容室は
「美容師さんとお客さん」だけの関係ですが、ここでは
「総合受付、患者の家族、病棟の看護師、美容師、お客(患者)」と
美容師さんとお客さんの間に、3つばかり余分な介在があります。
それがスムーズな伝達を妨げる要因だと思いました。

父の場合はトラブル続きでしたが、その後、他の患者さんの
散髪をたまたま目にした時は「これは便利なシステムだな」と
思った事も、参考までに記しておきます。
その時、業者さんは移動式のシャワー付洗面台を使用していました。
車いすの方が病院のロビーで、洗髪しているのです。
その後ドライヤーで乾かし、最後に鏡を見せてもらう光景は
普通の美容室そのものでした。患者さんも「うん、良いね」と満足そう。

「へぇ、これなら美容院に居るのと全然変わらないな。
病院に居ながらここまで出来るなら、いいな。すごいな」と
素直に思いました。
傍らでまじまじと凝視している私に気づいた
美容師さん達は「あ、いつも立ち会う人だ」と思ったのか
満面の笑みで「どうも、こんにちは!」と挨拶してくれました。
散髪に関しては毎回大変だが、美容師さん達とこうして
直接触れ合うと、いつのまにか親しみも増すのか
「なんか、やっぱり憎めないのよね」と思ってしまう、この頃です。

どうも訪問歯科の時と言い「意外な場所が早変わり」と言う光景と
イケメンに、私は弱いのです。
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第58話「手と爪のケアをしよう」 [寝たきりの日々と工夫]

2014年秋

父を療養型病院に預けてから、特に気になったのが
「手と爪のケア」についてです。

初めに「手のケア」から。
父は病院に入ってから、手をぎゅっと握りしめるようになりました。
原因はわかりませんが、眠っている時は力が緩むので、
恐らく硬直などではなく(目が見えないために)不安なのでは
ないかと、周囲は憶測しました。

理由は何であれ、手を握ったままだったり、またミトンなどで
拘束されたりすると、手の中が汗で蒸れて臭いが発生します。
ひどい人は手のひらに菌が繁殖し、大変な状態になる事もあるとか。
父も当初は拘束用のミトンをしていましたが、その後は
必要がないとみなされ、外されました。
しかし手は握りしめたままなので、入浴して洗ってもらっても
すぐに様子がおかしくなります。

そこで近所の看護師Jちゃんが、教えてくれたアドバイスに従って
洗面器と石鹸を用意し、ベッドで直に手を洗う事にしました。
これは効果てきめん。隙間までしっかりと洗えるし
臭いも取れます。
ただしベッドサイトでお湯を扱うので、こぼれて濡れたら大変です。
なのでこれは、毎週日曜日にお見舞いに来てくれる叔父と
二人がかりで行う作業になりました。
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それ以外の日は、私一人が病院に通っていたので
病院に置いてある、温かいおしぼりを借りて
手を拭きました。
また市販の「ミズコットン」と言う精製水を用いた
医療用おしぼりも効果的でした。これは紙おしぼりなので
生地が薄く、しかも丈夫なので指の隙間も綺麗に拭けました。
(ただ少しコストがかかるかもしれません)

これらを交互に用いて、仕上げには手のひらにガーゼを握らせます。
このガーゼは湿気とりも兼ねますが、伸びた爪が手のひらに
食い込むのを防ぐ効果もありました。
これだけで、ずいぶん手の衛生が保たれました。

ちなみに病院側の看護師さんが言う事には
「(鼻からチューブで栄養を取っている)経管治療の方は
普通の患者さんよりも、手のひらが臭う気がする」との事。
これはその看護師さんの独自の見解なのですが、聴いてみると
「初めは手を握っている人だけが、臭っているのかと思ったけど
ある時『違うな』と気がついたのよね。手を広げている人でも
経管治療の人は臭いが強い気がするの。どうしてかしらね」と。
たまたまなのか、何か因果関係があるのか。

もし関係性があるとしたら、解決法も知りたいところですが
今の所、上記の方法で衛生を保つしかなく、また看護師さんも
「(うちの父は)いつもケアをされているから、随分ましな方ですよ」と
言って下さったので、それなりの効果はあるようです。

余談ですが、手のひらに握らせているガーゼは
わりと紛失&消耗します。
基本的に毎回家に持ち帰って洗っているのですが、
入浴時に外した時、自然に紛失したり
またおむつ替えの時に汚物が付くなどして、捨ててしまったりを
繰り返すので、安い物を大量に用意するのが望ましいです。


次に「爪のケア」ですが、これは基本的に
看護師さんや介護士さんに頼めば、切ってもらえます。
だけど寝たっきりの病人の爪は、伸びるのがすごく早いです。
普段指先を使っていない分、摩滅(まめつ)しないので
伸びが早いのです。なので頻繁に爪切りが必要になるのですが
そうたびたび頼むのも、少しためらわれます。

それなら自分で切ってみようと試みたのですが
人の爪を切るのは、思いの外すごく怖い作業でした。
痛さや程度の感覚が全然わからないし、仮に出血でもしたら
糖尿病患者は治りが悪いので、重症化してしまいます。

でもそんなある日、偶然スーパーの金物市で
「爪やすり」をみつけました。
確か850円前後の品でしたが、これはかなりの優れモノでした。
切る事に比べて時間はかかりますが、何より安心で安全です。
(大体目安として、片手5本分を研ぐのに30分程度かかります)
これを見た看護師さん達も「やすりが一番安全なんですよ」と
奨励してくれました。
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しかし、それなら看護師さん達に
「ではやすりを託すので、爪のケアをお願いします」とは
やはり言いにくい。
看護師さん達は、1人の患者の片手に毎回30分も
時間を費やせる程、暇ではないからです。
かくして爪のケアも、家族が行う介護のひとつになりました。

ちなみにこの「手と爪のケア」には、単に衛生上の
問題だけではなく、もう一つ思いがけないメリットがありました。
それは爪を磨きながら色々な話をすると、本人も気持ちがいいのか
最後はいつも、すやすやと寝入ってしまいます。
心が安らぐのかもしれません。
心なしか介護する側も、気持ちが穏やか。
手に触れる所作は、物言えぬ病人の気持ちに寄り添い
不安を取り除ける作用もあるのかなと、そんな気もしました。
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第55話「療養型病院での介護のコツ」 [寝たきりの日々と工夫]

病院にお見舞いに来る家族には、当然ながら
いろいろなタイプの方がいて、それぞれが病室で
患者さんに対して行っている事は異なります。

ずっと黙って患者を見ているだけのご家族もいれば、
毎日みんなで温かく世話をしているご家族もいます。

この章では主に、私たち家族が実際に行った点から
「こういう物があると便利かな」と言ったグッズ類や
ケアの方法などを、ご紹介したいと思います。

まず日々病院に出向いて、どんなことをしたかと言うと
肌に化粧水や乳液を塗ったり、口にリップクリームをつける事
(乾燥予防)
爪切り、手指の消毒、耳掃除、顔拭き(主に目元)、薬をつける
ラジオをつける、日々の出来事を話して聞かせる…などなど。
要するにこれらの事が、病院側ではなかなか
手が行き届かない箇所、と言う事になります。

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そこで「あったら便利な物」として、一つ目は「耳かき」
これは出来たら、光るタイプがあると便利です。
病院はどこも、耳掃除まではなかなかしてくれません。

次にガーゼ。
これは手を拘束された場合、特に必要になります。
仮に拘束されていなくても、何故か患者さんの手は臭うので
握らせておくと、衛生面で効果を発揮します。

近所の看護師Jちゃんが、父のお見舞いに来てくれた時
「手にはガーゼを握らせてあげるといいよ」と、教えてました。
Jちゃん曰く「前に病院で、手をぎゅっと握ったままの
おじいさんがいてね。みんなうっかりして、手を広げてみなかったの。
そうしたらある日、広げてみると…手の中がえらい事になっていてね。
それを治療して、元の状態に戻すまで大変だったんだ」との事。
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また「爪切り」も頻繁に必要になります。
使っていない手は、摩滅しないせいか爪が伸びるのが早いのです。
看護師さんにお願いすれば、切ってくれますが
それでも追いつかないほどに、早く伸びます。
そして初めて気が付いたのですが、人の爪を切るのは
想像以上に怖いです。感覚が良くわからないからです。

なので私は、金物市に行って専用の「爪やすり」を購入しました。
やすりで爪を研ぐと、時間はかかるけれど(片手につき30分ぐらい)
刃物を使うより、はるかに安全です。父も気持ちがいいのか
研いでいる間は、良く寝入ってしまっていました。

他は、病院内はどうしても乾燥するので
リップクリームとか、化粧水、乳液があると便利です。
乾燥の程度がひどい時は、自宅で使っていたぬり薬などを
使う事もありました。(病院側の許可次第で)

あと、電動髭剃りなどは病院側から「用意してください」と
あらかじめ指示されます。ただし機械の掃除まではしてくれないので
この掃除に関しては、時々お見舞いに来る叔父に任せました。
うちは併せて耳毛カッターなども用意して使っていました。
これは人によりけり…かなと思います。

最後に「できればあると便利」と言う物は
急なお見舞客に備えての「メモ帳とペン」
ベッド上のゴミや皮脂、髪の毛を取るための「小さなコロコロ ローラー」
(これは100円ショップなどで買えます)
そして場合によっては「洗面器と石鹸」
これは硬直し蒸れた手を、指の間までほぐして洗ってあげるため。
他にも各家庭によって「こういうのも便利」と言う物が
沢山あるかと思いますが、とりあえず我が家の場合は
こんな感じでした。

そしてたまに病院側から、温かいおしぼりを借りては
顔や頭、掌などを拭いたりもしました。
本人も気持ちよさそうですし、固く目に張り付いた
「目やに」などを、ほぐして取るのにも重宝です。

そんなこんなで、大体日々「今日はここが荒れている」と言う
箇所をケアしていると1時間~1時間半ぐらいが
あっという間に過ぎていきました。
この間に、自宅であった事や、父が知っている方々の近況などを
話して聞かせたり、ラジオをつけて最新のニュースについて
話すなどして、なるべく退屈を紛らわせていました。

そうすると、来た時は病人ぽかった父の顔が
帰る頃には、心なしかつやつやふっくらしています。
気のせいか、自己満足かもしれませんけど
でもこうして日々、病人に話しかける事は実はものすごく
大きな意味を持っているのかもしれません。
そう思う出来事が、病院通いをしている間に生じました。
次回はそのお話です。
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