第71話「病院内でのスキンケア大作戦」 [寝たきりの日々と工夫]

2015年・夏

病院に通って、色々と父のケアをしていたある日の事、
次第に父の顔が荒れだしました。
乾燥しないように化粧水や乳液を塗っても、次第にボコボコと
クレーターのように、おうとつが沢山出始め
「何やら毒素でも出ている様な」そんな様子です。

この時ちょうど遠方にいる従兄弟(いとこ)が
一時帰省していて、病院にもお見舞いに来てくれたのですが、
父の顔を見るなり「もしかしたら、化粧水が合ってないんじゃない?」
と言いました。従兄弟曰く、自分も以前化粧水が合わなくて、
同じ様な肌の状態になった事があるらしいのです。

肌ぼこぼこ75.jpg

従兄弟の場合は、皮膚科の医師に処方してもらった
化粧水に切り替えて事なきを得たらしいのですが、父の場合は
なかなかそうもいかず。
それで試しに薬局に行ってみると、思いの外「老人敏感肌用」の
市販の薬用化粧水が出回っている事に気付きました。
とりあえず、ひとつ購入してみます。

「これできっと良くなるだろう」と、安心したのも束の間
父の肌は一向に良くなりません。ずっとボコボコのままです。
ついに見かねた看護師のKさんが「皮膚科の先生が
1か月に一度ぐらい巡回で来ているから、今度診てもらいましょう」と
本格的な受診を促してくれました。

と、同時に「それまでに少しでも綺麗に…」と
Kさんは通常のケア以上に、とても丁寧に
顔を整え続けてくれました。
Kさんがやった事は温かい蒸しタオルを長時間顔に当てて
肌をほぐしてから汚れを拭き取り、ただワセリンを塗ると言った
とてもシンプルなモノでした。

が、しかし。
そのケアを始めてから間もなくすると、驚くべき事に
父の顔が綺麗になり出し、ついにはキメが整って
非常になめらかな、まるで絹のような触り心地になりました。
思わずKさんと顔を見合わせて「私よりもキレイな肌」と
呟いてしまうほどに、つやつや滑らかです。

スキンケア75.jpg

そう、私たちは「病院は乾燥するから」と、ひたすら保湿を
心がけていましたが、ここで盲点だったのは
「寝たきりの病人は、健常者と同じようには顔を洗えない」と言う事でした。
てっきりお風呂の際に洗ってくれているモノ…と思っていましたが
必ずしも完璧ではないようです。
そしてこれは介護に限らず、女性ならほとんどの人が
「ああ!」と膝を打つ内容ですが、美容の基本はクレンジングです。
「クレンジングと化粧水が一番大事」とさえ言われるほどに
汚れを正しく落とす事はとても大事。

父の場合もまさにそれでした。
要するに、汚れが残った顔に何を塗ってもダメだし
余計に肌荒れを起こします。
しかしKさんが丁寧に汚れを落としてくれただけで
こんなにキメが整って綺麗になるとは…と、思わず高い化粧品に頼る
自分自身のスキンケア方法を見直してみたくなりました(苦笑)

後日、皮膚科の先生が往診に来て下さったのですが
その時にはもう診察が必要ないぐらいの肌になっていました。
(でも一応「アトピーの気がある様なので」と塗り薬を下さいました。
父は元気な頃から、「毒素が強い」と言われる体質でしたが
それは今で言う「アトピー」の事だったのかなと思います)

なめらかな顔75.jpg

その他にも「女性が男性を看る場合の介護」で、盲点になりそうな事として
『剃刀の刃を交換する』と言う事も、念の為に記しておきます。
日頃から電動剃刀を使用しない女性からすると、その使い方は
勿論の事、時折刃を交換しなくてはならないと言う事も、知らない人が
多いかもしれません。
そもそも髭剃りの掃除自体「分解したら元に戻せなくて怖いな」と
思う人が多々いるかもしれません。

私自身も「髭剃りは一度買ったら、ずっと刃が使えるもの」と思っていたし
掃除も叔父に一任していました。
しかし、ある日Kさんに「少しひげが剃り難くなってきたから
新しい刃に交換した方がいいかも」と言われて初めて
「そうなのか」と気が付きました。
(ちなみに刃が古いと皮膚に引っかかって、本人も痛いらしいです)

これは看護師さんから聞いた話ですが、病院によっては
介護師さんが髭剃りを掃除したり、刃を交換するなどのケアを
してくれる所もあるそうです。しかし逆に、全くしない所もあるらしい。
なので後者の場合は、頭の片隅にでもいいので髭剃りのケアを
覚えておくのがいいかもしれません。

剃刀の刃について75.jpg


なので今回、私自身が体験した「病院内スキンケアの盲点」は

1:顔は普通に洗えると言う発想は、寝たきりの人の場合通用しない事
2:美容にはやはりクレンジングがとても大事であり、効果的であると言う事
3:髭剃りは自主的に清掃・点検するのが望ましいと言う事

の3点です。
ちなみに髭剃りに関しては、叔父が新しい物を見つけてくれたので
機械ごと一新しました。そんなこんなで、年末に従兄弟が再び
帰省した頃には「顔が綺麗になっていて驚いた!」と、言ってもらえる程に
父の顔は復活していました。

通常の業務で時間がない中、ひと手間かけて父の顔のケアを
研究&実践して下さったKさんに感謝です。


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