第70話「寝たきりの新たな問題、それは拘縮」 [寝たきりの日々と工夫]

2015年7月

暑い夏も寒い冬も、毎日病院に通う日々。
それも2巡目の夏を迎えました。
療養型病院に毎日見舞いに行く必要があるのか否か…は
それぞれのご家族のご都合や想い、患者さんの症状によっても
異なるので一概には言えませんが、うちの場合は本人が
全く動けず、意思表示もできない状態なので
心配で毎日通っていました。

実際に行くと、結構色々な事があったりします。
例えば何かの医療器具のキャップが布団の中や
病衣の襟元に転がり落ちていたり(踏んだら痛いよね)
色々テーピングした後のゴミや、おしぼりの袋ゴミなどが
布団の周囲に散らばっていたり。

これらは単純に看護師さんや介護士さんのうっかりミスなのですが
このように忙しく世話して下さるスタッフさんの手が回らない部分の
フォローを兼ねて、父の様子を見に行く…と言う感じでしょうか。
ただ一度、お風呂上りにストレッチャーに敷いたと思われる
ずぶ濡れの毛布が、布団の中に丸めて置き去りにされていて
(同系色の白なので、わかりずらい)布団や父が冷たく
濡れていた…なんて事もあり、まぁこれは極端に酷い例ですが
そんなこんなで色々気にもなるので、この夏も出来る限り病院に
通っていました。

72出会いと別れ1.jpg


ところで病院に入った途端(要は寝たきりの状態になった途端)
父には新たな問題が浮上していました。
その名も「拘縮(こうしゅく)」
人は長時間体を動かさないでいると、自然と関節部分が
伸縮性を失って固くなり、関節の動きが悪くなってきます。
例えば肘(ひじ)や膝(ひざ)が、折れ曲がった状態のまま
戻らなくなったりとか。
分かりやすく言うと、体が変な具合に固まってくる感じでしょうか。

実際に調べてみると、拘縮には色々な種類がある様ですが
父のように寝たきりになって、関節が動かなくなる場合は
(病棟の看護婦さんのお話では)「廃用性拘縮」と言うらしいです。
父は入院してすぐに、足のひざを折り曲げるようになりました。
病院の看護師さん達から「いつも足を折り曲げてます?」と聞かれて
「いやそんな事はないですよ」と、当初は不思議な気分で
答えていたのですが、結局父がその姿のままでずっといる事に
おかしいと疑念を抱いてから、「拘縮」と言う現象がある事を知りました。

ちなみに父は足のひざの外にも、麻痺していない方の右手を
ぎゅーっと握りしめる様にもなりました。初めは「なんでだろう?
目が見えないから不安なのかな?」と思っていたけれど、これも拘縮。
それでは拘縮になって、一体何が困るのか…と言うと、
それはずばり「介護がしにくいんだよね」と言う事に尽きます。

本人も関節を伸ばす際は痛いみたいですが
(実際には容易には伸ばせないほどに、凝り固まっているんですけど)
こちらとしても、閉じている手の中は汚れやすくなるので
洗いたいけれど、なかなか手を開いてくれないから一苦労…とか
病衣が乱れているからうまく着せようにも、折れた足が邪魔で
うまく行かないとか、そんな弊害が出てきます。

拘縮対策にはマッサージなどが効果的の様ですが
うちの場合は衛生面を色々と工夫してみました。
前にも記したように、洗面器にお湯を張って石鹸で洗ったり
ガーゼを握らせたり、こまめに爪を研いだり、等々。
ところでこのガーゼ、市販の物を適量に切って使用していたのですが
ある日病院の近くに住んでいて、時折父のお見舞いにも来て下さる
親戚の方(私の母の弟のお嫁さんのお母様)が
「家にある、いらない手ぬぐい(布巾)を利用したら、良いものが
出来るのではないか」と考え付き、オリジナルの手ぬぐいガーゼを
作って下さいました。

70硬縮2.jpg

なるほど、これはなかなか便利です。
しかも家にある、いらない手ぬぐいを利用できるから
コストもかからず一石二鳥。
もし宜しければご参考までに。

70硬縮1.jpg

洗うと裾がほどけて、モアモアした感じになるのが
玉にきずですが、それもまぁ柔らか味が増して悪くないかと。

ところでこの拘縮以外にも、看護師さんが
「寝たきりになると、色々良からぬ事が起こるのよね」と言う話を
聞かせてくれました。例えば良く聞く所では「床ずれ」とか
または「肺炎」などもその類です。

以前から「なぜ病院では、肺炎にかかる方が多いのだろう」と
疑問に思っていたのですが、看護師さん曰く「寝たきりの患者さんは
(当然ながら)寝たままで咳をするでしょう?そうすると唾などが
気管に入りやすくなる。だから肺炎を起こしやすいの」と。
なるほど、原理がわかれば実にシンプルな因果関係です。

それにしても介護って、次から次ぎと状況の変化に応じて
色々な問題が顔を出すものだなと、今更ながら思います。
しかし同時に、その都度、知恵を授けて助けてくれる人も
いるものだな、と。
介護とは、日々是色々な事の勉強…かな。


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