第85話「最終話。介護転じて未来に向かう」 [その他]

「おやおや介護絵日記」も、ついに最終話になりました。
最後はちょっと前向きに、明るい話題で締めくくりたい
と思います。

介護は先が見えず不安だし、色々な事が生じて大変ですが
自分の軸をしっかりと持っていれば、恐らく必要以上に
揺り動かされず、ぶれないんじゃないかなと思います。
そして時には、介護をしなかったら到底巡り会えない様な
思いがけない未来が開ける事もあります。

私の場合は「絵描き」と言う職業柄、どんな状況にあっても
常に描く事を考えています。
「描くこと」が軸だとすると、介護はその周りに発生した
一過性の出来事でした。介護に限った事ではないのですが
日頃の生活の中で影響を受けたものは、自然と
作品と言う形に結びついて、出て来ることがあります。

そうした流れの中で、最初に形となって出て来たのが
このブログでした。次いでブログを読んで下さった
編集者の方に作って頂いた本が現れました。
これは私にとって初めての著書となりました。

85介護の本ができたこと.jpg

次いで、その本を書店で見かけた
TV番組のディレクターさんによって、ほぼ全国的にで放映して頂き
(それ以前から企画していた展示会では)都内のギャラリーで
原画展も開催できました。
(奥に映っているのがテレビ映像の一部)

85本の原画と映像と.jpg

次いで介護の舞台が自宅から病院に移った後は
病院へのお見舞いが飽きないよう、少しでも楽しく
通えるようにと、イラストマップを描いていた事は
以前、第60話でもお伝えしましたが、入院期間が長引くに従って
そのマップも描く範囲が広がり、ついには父の病院があった
F市全体の地図に仕上がっていました。

85イラストマップGP展.jpg

85イラストマップの詳細地図一例.jpg

縦2メートル、横3メートル30に及ぶ、この巨大な地図は
その後、F市の様々な方の協力を得て、市内各所で
展示会をさせていただく事になります。

85フォーリス展示2.jpg

85フォーリス展示大盛況の図.jpg

更にはこのマップ、読売新聞の多摩版でも紹介して頂けました。
(2017年8月25日)

本(ブログ)にしても、マップにしても、介護の気晴らしにと
自分一人の世界で描き続けていたモノが、思いがけず
沢山の方に観て頂けたり、仕事のキャリアに繋がった事を
不思議だなと思うと同時に、ありがたいとも感じます。

ただこうして私自身がテレビに出演したり、新聞に載ったり、
展示会でスポットライトを浴びたりと、華やかになる一方で
(ライトを浴びているのは、正しくは私ではなく作品なのですが)
中には「この絵が嫌い」とか「大して上手くもないのにねぇ」とか
「絵地図に自分の家が描かれていない。この地図はインチキ」とか
そういう意図しないバッシングも多々受けました。

85グリーン展示会風景2.jpg

でも、そういうのも含めて全ての出来事には
「良い事も悪い事も、同じようにある」と思います。
華やかさも、バッシングも、表裏一体。
だけどどんな時でも、何を言われても、それでも描く。
自分の軸があれば、ぶれないし、何にも負けない。
そう信じています。

介護なんて、出来ればしないで済む方がいいし
正直やりたくはありません。
でも上記の様に、介護をしなければ生まれて来なかった
作品もたくさんありました。
そして同時に、どんな状況に陥っても自分は描いていける
と言う、揺るがない自信を持つことも出来ました。

私の場合は「描きたい」と言う気持ちが、自分の軸でしたが
きっと人それぞれ「こういう風に生きたい」と言う
願いがあると思います。そういう核を持っていたら
もしかしたら介護の形態は、自ずとその信念に
寄り添うように変わっていくのではないかと思います。

介護は堅い鉄板の様な、動かしがたい脅威ではなく
考えようによっては、柔軟性を持っているものだと言う
捉え方もできます。
「介護」と言う重い現実に、押しつぶされるのではなく
この状況を自分でコントロールしてみようと言う、
強い気持ち、もしくは肩の力を抜いたユーモアのある気持ち
(両極端ですが、要はその人が困難を乗り越えやすい
心の状態)で臨んだら、様々な可能性がそこには見えてくる。
そう信じたいです。

「やはり、悪い事ばかりでもない」というのが、
私自身の介護の結論です。

父の介護は終わりましたが、私の人生と作品はまだ続きます。
これからもたくさんの困難や、華やかな出来事に
直面するかもしれません。
でもその都度、展開の意外性や、未知の出来事との遭遇に
ワクワクしながら、明るい気持ちで描き続ける事が出来ればと
思っています。

全85話にも渡る長いブログを読んで下さった皆様、
本を買って下さった皆様、
テレビや展示会を見て応援や感想を下さった皆様、
そして実際に父の介護に携わって下さった多くの皆様に
心より感謝いたします。

病を得て、社会との関係が希薄になっていた父に
「沢山の方が、本やブログを見て下さっているよ。
お役に立てている事も、きっとあると思うよ。
病院で寝たきりになっても、社会と縁が切れているわけでは
決してないんだよ」と、いつも話しかけていました。
読者の方の存在が、どれだけ本人の励みに
なっていたかしれません。

本当にありがとうございました。


85ラストの花かごの写真.jpg

総扉修正済み原稿100.jpg




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