第73話「番外編・子供たちと介護 その2」 [周囲の人々]

2015年冬~2016年1月

2015年も終わりに近づく頃、一年を振り返って
「父は今年も平穏無事に過ごすことが出来て
良かったな」と安堵します。
父が病院に入ったのと時期を同じくして
たまたまですが私の仕事も停滞してきました。
そうなると時間はあるので、毎日お見舞いには行けますが
収入は徐々に不安定になり心許ないです。

でも実はこの年の初め、神社に初もうでに行った際に
引いたおみくじに「勤めに暇(いとま)ができたなら、
親の心を慰めるよう心がけよ」と、書かれていました。

こんな内容のおみくじがあるとは!
しかも今の状況に怖いぐらいピッタリです。
偶然ですが、何となくこれを引いた途端
「そうか。今は下手に焦らずとも、こういう時期なんだな」と
自然に思え、引き続き落ち着いて頑張れる気がしました。
そして実際、この1年間はおみくじの言葉通りに過ぎました。

おみくじ75.jpg

明けて2016年のお正月。
父の病院は小さい子供の面会が禁止されていますが
せめて年初めの挨拶ぐらいは…と、小さい姪(4歳)を伴って
家族全員で病院に向かいました。
学齢に達した甥は、時々病院に来ていましたが
姪は久しぶりなので、目に入るモノ全てが珍しい様子です。
なのでひたすら大人しく、じーっと私たちが介護する様を
見ていました。

しかし決して見ていただけ…ではなかったのです。
彼女は私が行っていた言動を、全てインプットしていて
帰宅後、少し休憩すると言って横になっていた母を相手に
いきなりお医者さんごっこを始めました。

介護を真似する75.jpg

例えば「お目めの汚れを拭いてあげましょうね。
この部屋には柔らかいティッシュがなくてごめんね。
ティッシュで取れなかったら、爪で取ってあげるからね」と言ったり
(注:私は父の目やにを取る際に、爪を立てた覚えはないのですが
姪にはそう見えたみたいです)
「頭を掻いてあげましょうね」と言っては、母の髪をぐしゃぐしゃにしたり。

挙句は、父の手の衛生のために
指に交互にガーゼを入れて握らせたのも見たらしく
おもむろにビーズのネックレスを取り出して
「お手々には、これを握らせてあげるからね」と
母の指にそれをからめて、ぎゅっと握らせたとか。
…それって拷問じゃない!?痛いんじゃないの!?

母は一連の彼女の言動を、ひたすら笑いをこらえて
見ていたそうですが、子供って全く関心ない風を装いながら
介護の様子を良く見ているものなんだなぁと、
気づかされた一幕でした。
そして手際を覚えた姪は、その後も時おり
「(私も)じじのお世話がしたい」と言っては、病院について
来ようとしていました。
父もそんな姪の仕草は楽しかった様で、いつも微笑んでいました。

介護の日々の間には、そんなささやかな笑いもありました。


(以下のイラストは、私が父を「お父さん」と呼ぶ事を
おかしいと思った姪が意見した時の話です。確かにこれぐらいの歳の
子供からみたら『お父さん』とは20代~30代ぐらいの男性の
イメージなんだろうなと思います。それにしても、まさかお友達に
されるとは…子供のイメージはすごいです。
父もさすがに驚いたと思います)

二人は友達1.jpg

二人は友達2.jpg



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